「次こそは、冷静に買い物をしよう。」
そんな誓いを胸に、我が家は今季2度目のコストコへ向かった。前回の反省は明確だ。大量に購入したパンと巨大ピザにより、数日間、冷蔵庫と食卓が完全に“コストコ支配下”に置かれたのだ。
特に苦労していたのは、妻と娘だった。朝も昼も夜も、パンかピザ。アレンジしても限界はある。「もうしばらく見たくない」という言葉が、どれほどの苦労を物語っていたかは言うまでもない。
そこで導き出された結論が、「パンかピザ、どちらか一つにする」という極めてシンプルなルールだった。
このルールを守ることが、今回のミッションである。
しかし、正直に言えば、私は別の目的を抱えていた。それが“生餃子”だ。最近の冷凍・チルド餃子の進化は目覚ましく、専門店に負けないクオリティのものも増えている。コストコの餃子も例外ではないという噂を聞きつけ、どうしても試してみたかった。
そのため、出発前から妻にはしっかりと“餃子プレゼン”を行った。「焼くだけで美味い」「コスパが良い」「冷凍保存もできる」など、あらゆるメリットを伝え、今回の目的の一つとして認識してもらうことに成功した。
一方、娘の関心はまったく別のところにあった。前回、帰り際に食べたホットドッグがよほど印象に残っていたらしく、「今度は自分で玉ねぎをぐるぐるしたい」と、すでに“体験型グルメ”への意欲を見せている。
こうして、それぞれの思惑を抱えたまま、コストコに到着した。
店内に一歩足を踏み入れた瞬間、前回以上の人の多さに圧倒される。巨大なカートがあちこちで行き交い、まるで巨大迷路のような光景が広がっていた。
そして目に入るのは、やはりあの光景だ。
山のように積まれたパン。圧倒的な存在感を放つ巨大ピザ。
どのカートを見ても、この2つのどちらか、あるいは両方が入っている。改めて、その人気の高さを実感する瞬間だった。
「さて、我が家はどうするのか。」
今回の最大の見どころである。
まず私の意見は明確だった。「どちらかと言えばピザ」。理由はシンプルで、満足感が高いからだ。一切れのボリューム、味のインパクト、そして“コストコらしさ”。どれを取ってもピザは魅力的だと感じていた。
しかし、娘は断固としてパン派だった。「あのパン、美味しかったよね。また食べたい!」と、目を輝かせながら主張する。その姿に、前回の記憶がどれほど良い体験だったかが伝わってくる。
そして問題は妻である。
「パンもピザも美味しかったから、両方買う?」
まさかの“ルール破り宣言”だった。
出発前に決めたはずの約束は、いとも簡単に崩れ去った。あれだけ苦労したはずなのに、人はなぜ同じ過ちを繰り返すのか。心の中でツッコミを入れつつも、家族の空気に抗うことはできない。
結果――
再び、パンとピザの両方を購入することになった。
(マジか…)
とはいえ、まったく進歩がなかったわけではない。妻は前回の“量の多さ”をしっかりと学習していたようで、今回は比較的控えめなパンを探し始めた。
そこで目に留まったのが、ベーグルだった。
一見するとコンパクトに見えるが、6個入りが2袋で1セット。合計12個という、やはりコストコらしいボリューム感だ。それでも前回のパンに比べれば「まだ現実的」と判断し、これに決定した。
そして、問題のピザである。
コストコのピザには「小さめ」という選択肢は存在しない。どれを選んでも“巨大”。それが魅力であり、同時に試練でもある。
今回も例外ではなく、しっかりとしたサイズのピザをカートに入れることになった。
こうして、当初のルールは形骸化しつつも、「前回よりはマシ」という微妙な進化を遂げた我が家の買い物は進んでいく。
そして、忘れてはならない私の目的――生餃子。
冷凍食品コーナーでついに発見したそれは、想像以上に魅力的だった。見た目の美しさ、ボリューム、そして価格。どれを取っても期待を裏切らない雰囲気を漂わせている。
迷う理由はなかった。
迷わずカートへ。
この瞬間、今回のミッションの半分は達成されたと言ってもいい。
その後も店内を回りながら、必要なものをいくつか追加し、レジへと向かう。会計を終えた後は、娘の楽しみにしていたホットドッグタイムだ。
自分で玉ねぎを回して盛り付けるその姿は、どこか誇らしげで、見ているこちらまで嬉しくなる。こうした“体験”もまた、コストコの魅力の一つなのだろう。
帰宅後、キッチンには再びパンとピザ、そして新たに加わった餃子が並ぶ。
「またこの生活か…」と思いつつも、不思議と前回ほどの不安はなかった。少しだけ学習し、少しだけ工夫することで、同じ状況でも受け止め方は変わるのかもしれない。
そして何より、“好きなものに囲まれる時間”は、やはり楽しい。
コストコは単なる買い物の場ではなく、家族それぞれの価値観や好みが交差する“イベント”のようなものだと、改めて感じた。
次回こそは、本当に「どちらか一つ」にできるのか。
それとも、また同じ結末を迎えるのか。
答えはまだ分からないが、ひとつだけ確かなことがある。
きっとまた、行く。
